専門看護師を取得してスキルアップしよう!

2021年10月14日 掲載

せる羽
せる羽

看護師のスキルアップ資格である「専門看護師」は知っていますか?
2021年注目の資格です。

専門看護師の役割と働き方

専門看護師の役割は、日本看護協会が発表した「実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究」の6つの役割があります。

実践

日本看護協会によると「個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する」と定義づけられています。これを噛み砕いて説明すると、「患者とその家族とのコミュニケーションを通じて、彼ら抱える病気に対する漠然とした不安の原因が何であるのか判断し、それを解決する看護を考え実行する」ということです。

この業務については、通常の看護師と大きな差はありませんが、看護師は「患者さんのみ」コミュニケーションをとることがほとんどですが、専門看護師は「患者さんとその家族」という点が異なります。

そのため、「闘病生活における不安」だけでなく「見守る側の不安」を解決する施策を考える必要があり、心理カウンセラーなど病院外の他職種の人とも連携をとって仕事を進めることとなります。

相談

日本看護協会によると「看護者を含むケア提供者に対してコンサルテーションを行う」と定義づけられています。つまりこれは、「患者への看護に関して担当看護師から受けた質問を自身の専門的知見を踏まえて解決すること」です。

これは、自身の専門分野に対する知見が発揮されるため専門看護師ならではの仕事であると言えます。

調整

日本看護協会によると「必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う」と定義づけられています。具体的な活動としては、「患者の意向により病院等から自宅へ移動しても必要な医療処置が受けられるように、医師・訪問看護ステーションやケアマネージャーなど関係各所に連絡をとり、必要な医療を調整する」などがあげられます。

倫理調整

日本看護協会によると「個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決を図る」と定義づけられています。

この役割が発揮される場面としては、「治療方針の決定時」です。患者さんやその家族が抱える不安や方針に対する思いを最大限尊重して治療できるように、治療にあたる医師や看護師に働きかけます。

教育

日本看護協会によると「看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす」と定義づけられています。具体的な活動は、現場看護師のスキル向上を目的として、施設内外で専門分野に関連する講演やセミナーの開催など行います。

研究

日本看護協会によると「専門知識及び技術の向上並びに開発を図るために実践の場における研究活動を行う」と定義づけられています。具体的な活動としては、「日々の看護で起きている課題を研究対象として向き合い、看護の質の向上に貢献する」ことがあげられます。

このような役割のため、専門看護師は特定の患者を受け持つのではなく、院内全体の患者・医療関係者と関わり仕事を行います。

13の専門分野

専門看護師は13の専門分野があり、自身で専門分野を選択します。

分野名特徴
がん看護がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する。
精神看護精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。
地域看護産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。
老人看護高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。
小児看護子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。
母性看護女性と母子に対する専門看護を行う。主たる役割は、周産期母子援助、女性の健康への援助に分けられる。
慢性疾患看護生活習慣病の予防や、慢性的な心身の不調とともに生きる人々に対する慢性疾患の管理、健康増進、療養支援などに関する水準の高い看護を行う。
急性・重症患者看護緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。
感染症看護施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。
家族支援患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。
在宅看護在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する。
遺伝看護対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する。
災害看護災害の特性をふまえ、限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供する。平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する。

(出典; 日本看護協会「専門看護制度」より抜粋)

専門看護師の収入

専門看護師の収入の内訳は「基本給+資格手当+施設外からの収入」となっています。

公益社団法人日本看護協会「専門看護師活動実態調査」によると、資格手当の支給額は「月5,000-10,000円」が平均となっている一方、資格手当が支給されている専門看護師は全体の30%にとどまっているのが現状です。

また、病院内外でのセミナーや講演などによる収入は1回あたり〇〇円と設定されていることが多く、都度異なります。

そのため、30代専門看護師の想定年収としては、

基本給470万円+資格手当6万円+大学での非常勤講師代50万円+院内セミナー代12万円=538万円程度が見込めます。

専門看護師になるには

専門看護師になるには、大きく3ステップを経る必要があります。

Step1.専門看護師教育課程のある大学院へ進学する

まず、日本看護協会が定める専門看護師教育課程を組み込んでいる大学院へ2年間通う必要があります。2021年現在対象の大学院は全国に105大学ありますが、各大学13ある専門分野のうち取得できる専門が限られていることが多いため、入学時に自身が取得したい専門分野がある大学を選定する必要があります。

詳しくはこちら→日本看護協会「専門看護師教育機関及び教育課程一覧」をご確認ください。

また、大学院の入学条件は「学士(4年生大学を卒業)を所有していること」となっているため、看護専門学校を卒業後看護師となった「学士未取得の看護師」はまず大学院に入学前に、看護系の4年生大学の3年次へ編入して学士を取得してから大学院に進学します。

Step2. 認定審査に合格する

大学院を卒業したら、次に認定審査を受験し合格する必要があります。

認定審査の試験内容は、書類審査と論述式の筆記試験となります。試験は、例年10月ごろに1回のみ開催されます。

合格率はこの10年で約78%前後で推移しているため、しっかりと事前学習で対策をしていれば困難なものではないでしょう。

Step3. 専門看護師認定証の交付+5年ごとの更新が必要

認定審査に合格したら、はれて専門看護師になることができます。

しかしながら専門看護師の資格は、1度取得すれば永年有効なものではなく取得後5年ごとに更新が必要となります。更新の際は、再び認定審査を受験しなければならないため注意が必要です。

まとめ

看護師のスキルアップ資格として注目されている専門看護師についてみてきました。資格取得までには大学院を卒業する必要があったりと、道のりは簡単とは言えません。しかしながら、患者さんのケアだけでなく自分を起点として患者・家族・医療関係者を巻き込んでできるダイナミックな仕事ができるのが専門看護師の醍醐味と言えます。

「さまざまな職種の人を巻き込んで看護を突き詰めたい!」「専門性を身につけたい!」というひとにおすすめの資格のため、ぜひ挑戦してみてください。

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